横須賀沖に浮かぶ無人島・猿島の火災から1週間が経ち、航路再開や全焼したレストハウスなどの復旧を目指した動きが始まっている。9月中には猿島航路が再開される見込みだ。
猿島航路は17時が最終便のため、火災当時の島は無人だった。8月29日18時33分頃、猿島公園レストハウスから出火を確認、対岸の市民から通報があった。同18時56分、消防局が船舶会社の渡船で出航。猿島到着後、桟橋から可搬ポンプ3台を使って海水を汲み上げ、炎上するレストハウスに対し消火活動開始。20時49分に鎮火が確認された。
同海岸に建てられたレストハウス物販棟(レンタルショップ・キッチン)約164平方メートルが全焼。同上部のボードデッキもほぼ全焼。多目的ホール・管理棟は屋根の一部が延焼した。焼失面積は約200平方メートル。けが人はなかった。警察・消防による調査の結果、出火の原因は不明とされる。
火災の様子はツイッターやフェイスブックに対岸からの画像が多数投稿され、YouTubeには動画もアップされた。早期回復を応援するメッセージもたくさん書き込まれるなど、市民の関心の高さがうかがえた。
猿島には水道・電気設備がなく、普段は井戸水利用や自家発電でまかなわれている。2008年と2009年に同島で消防訓練が実施され、消火活動に必要な可搬ポンプが消防局に常備され、船舶会社との連携もあって早期鎮火でき、レストハウス背後の自然地帯への延焼は免れたようだ。
同島を管理する横須賀市緑地管理課は、「がれき撤去が済み次第、9月中に猿島航路を再開したい。エコツアーなど島内散策が行えるよう早期の復旧作業にあたる」という。島内バーベキューについては「年内に施設の全面復旧に向けた検討を行う」としている。全面復旧には約7,000万円の費用が見込まれ、火災保険や市の補正予算などの手続きも進める。
猿島航路を運営するトライアングル担当者は「バーベキューは人気アイテムだが、それ以外にも無人島の立地を生かした活用法を検討していきたい。さまざまなエコツアーやイベントなど市民の皆さんと一緒に考えていけたら」と話している。
猿島は、周囲約1.6キロの無人島。幕末に台場が築造され、明治期には要塞・砲台も築かれた。島内の岩壁を掘ってレンガで覆われた要塞跡は現在も残る。1947年に渡船運航が開始されたが、1993年には不採算を理由に航路が一時廃止となった。
1995年に同市が大蔵省から管理委託を受けて航路を再開。2007年3月、国から猿島の無償譲与を受け、「エコミュージアム・猿島」をテーマに自然環境と歴史遺産を保全しながら散策路整備や管理棟などを建設。近年は海水浴やバーベキュー場として人気を集め、年間約13万人の利用者がある。