横須賀火力発電所(横須賀市久里浜9)で7月14日、夏場の電力供給を支える緊急電源としてトレーラー型の移動ガスタービン発電機13台が報道陣に初公開された。同発電所は長期計画停止となっていたが、震災による電力不足で運転を再開し、7月末までに約123万キロワット(約40万世帯分)を供給する。
防音壁に囲まれた一角に、移動ガスタービン発電機13台が設置された
同発電所では、火力3号機・4号機、1号・2号ガスタービンの運転再開により現在約90万キロワットを供給。夏場対策として緊急設置電源を新設し、米国製の移動ガスタービン発電機13台により、7月末までに約33万キロワットを追加供給する予定。
移動ガスタービン発電機は、米国GE社製のTM2500(2.32万~2.63万キロワット)10台、P&W社製(2.53万キロワット)3台の合計13台をリース契約で導入。現在、本格稼働に向けて試運転中で、全機稼働すると約33万キロワットとなり、約11万世帯分の電力が供給できる。車輪付きで大型トレーラーの形状をした移動発電機は軽油を燃料とし、制御室と発電機がユニットになったもの。海外ではサッカーW杯会場などの予備電源として使われている。国内導入は初めて。
細田義男副所長は「移動ガスタービン発電機は給電指示から約10分でフル稼働する。夏場の電力使用ピーク時などに合わせて柔軟に運用できる」と話す。
横須賀火力は、1960(昭和35)年に1号機(26.5万キロワット)が運転開始。1970年、1~8号機の運転開始により総出力263万キロワットと世界最大級の火力発電所に。2004年には、老朽化により1号機が廃止、その後2号機も廃止された。2004年10月より、火力5~8号機、ガスタービン2号機が長期計画停止。2007年、柏崎刈羽原子力発電所停止による電力不足で一部運転再開したが、リーマンショック後の不況により電力需要が落ち込み、2010年4月から全ての発電機が再び長期計画停止となっていた。
運転再開には、ピーク時で1,500人の作業員がパーツ交換・修理点検などの復旧作業にあたり、4月下旬から7月上旬にかけて順次運転を再開。現在は約600人が作業に従事しており、三浦半島と首都圏に電力供給する。
海沿いに立地していることから津波対策について、小関正剛所長は「東京湾で最大3.5メートルの津波を想定し、発電設備は高さ5メートル以上の立地に設置している」という。
東京電力は、夏場の供給力を最大5,680万キロワットとしており、このうち被災地の東北電力へ140万キロワットを電力融通する予定で、差し引き5,540万キロワットとなる見込み。今夏の電力需要は約5,500万キロワットと想定しているが微妙な需給バランスだ。異常な猛暑が続く中で、市民に節電協力を呼び掛けている。