多摩美術大学環境デザイン学科の学生たちが横須賀市汐入町の高台にある民家を約1年かけてリノベーションし、3月25日にお披露目パーティーを開いた。同大工芸学科の学生が制作したガラスランプなども展示された会場には、地元若者グループや近隣住民など約20人が集まって交流した。
リノベーションに取り組んだのは、今春同大を卒業した矢野香澄さん、小松勁太さん、溝口ひかるさんの3人。丘陵地の自然と調和する景観デザイン「やとみちプロジェクト」を提唱する。地形を生かしたジオラマ模型も作った。
周辺は坂道や200段超の階段が続き、「谷戸(やと)」と呼ばれる地域。明治期より「軍港の街」として発展した横須賀では、海を臨む丘陵に民家が増えたが、現在高齢化が進んで市内でも有数の空き家が増えているエリア。
同プロジェクトは「汐入町から西逸見町にかけての谷戸地域という場所で、風景から考えるまちづくりを実践したい」と1年前にスタート。「民家を改造して居心地のいい空間をつくるという1番目の企画がひと段落しました」とメンバーはほほ笑む。
リーダーの矢野さんは、昨年2月に行われた「第3回 横須賀まちづくりコンペ」(学生団体スカペンコ主催)で、空き家を活用した「横須賀二拠点生活」を提案して優勝し、市長に政策提言も行った。その後、同企画を多摩美大の同級生らとブラッシュアップ。地元IT企業の支援を受け、空き家のリノベーションを始めた。
昨年の夏休みには、周囲の竹やぶや雑草刈りに汗を流し、2階建て民家の1階部分の床や天井も解体した。今年1月から2月にかけて、床のフローリング張りや内装を手作業で行い、大学の後輩たちや近所の人たちも手伝いに来てくれた。
「まちの風景には物語があります。それは地理や地形や歴史だけではなく、そこに住む人たちの心身に染み込んでいるもの」と矢野さんは話す。「海が見え緑豊かな谷戸の自然と調和する景観デザインについてもみんなで相談したい。若者や近隣の人たちの交流拠点としてスペースを活用していければ」と期待を膨らませる。