NPO法人アンガージュマンよこすか(横須賀市上町2)の石井利衣子さん(33歳)が昨年12月、「かながわ若者生き生き大賞・キララ賞」を受賞し、横須賀・上町商店街で就労支援「はるかぜ書店」を運営するなどひきこもりの若者支援の輪を広げている。
生活クラブ協同組合が主催するキララ賞は、時代を切り開く若者に贈られる賞で、神奈川県内で2人が受賞。石井さんは、アンガージュマン事務局長、はるかぜ書店店長として活躍し、ひきこもりの若者たちを支援する活動が評価されたもの。
石井さんは、中学1年の時に不登校になり、高校はサポート校に通った。短大に進学したが社会になじめずひきこもりを続けた経験を持つ。「自分の居場所が見つからず、混乱する気持で自分探しを続けていた」と振り返る。
5年前にはるかぜ書店開業とともにスタッフとなり、3年前から店長に。石井さんのモットーは「無理せず自由に」。「マイペースで自分ができることをひとつひとつ積み重ねながら、仕事する喜びを覚えていった」と石井さん。自らのひきこもり体験を生かして、「ここは自分がやりたいことを見つける場所」と新しく入ってくる就労体験の若者たちをサポートする。
商店街の中に就労支援施設があるため、イベントの手伝いなどを通して近所付き合いも自然に身に付けていけるという。働くことの意味や役割分担などもここで学ぶ。「商店街との繋がりも大事。まわりの皆さんも気軽に声を掛けてくれる。人手が足りないときは他のお店にアルバイトの若者を紹介することも」と石井さん。
アンガージュマンでは、子どもたちや若者が集まるフリースペース運営、地元農家と提携して野菜の宅配事業なども行う。はるかぜ書店に隣接するカフェに、アート作品を並べるレンタルボックスも設置するなど街の交流拠点も提供する。商店街の夏祭りや福引セールの手伝いも「商店街の働き手」として予算をもらって引き受ける。「働くことの価値も理解でき、やりがいも見つけられるんです」と石井さん。
「ひきこもりは特別なことではなく誰でもなりうるもの。社会が生きづらくなっていることの現れだと思う。普通でない生き方でも許容できる社会であってほしい」と石井さんは呼び掛けている。