横須賀のパン工房「カフェ・ド・クルー」(横須賀市根岸町3、TEL 046-835-6555)で3月14日、横須賀産小麦で作ったパンの試食会「よこすか小麦の会」が行われた。
当日は、横須賀産小麦を配合した食パン・フランスパン・バターロールと外国産小麦で作った同種類のパンが配られ、参加者はそれぞれを食べ比べて味覚・食感・満足度・感想などをアンケート用紙に記した。参加した20代女性は「地元産小麦のパンに興味を持った。固さはあるが味にコクがあるように感じた」という。
試食会を企画した同店専務の森柾人さんは「横須賀産小麦はまだ生産量が少ないが、地産地消を推進するため商品化に向けた試作品作りを昨年から続けている」という。同店では、北海道産小麦と酒米粉を使用した「食パン」「よこすか海軍カレーパン」の販売が好調。名物「よこすかメイプルメロンパン」の生地には横須賀産小麦を使用している。
近年、小麦の総生産量は世界的な気象変動により減少傾向にあり、2009年の総生産量は574万トンで、国産小麦は67万トン。「パン製造に使われる国産小麦は約1万トンに過ぎず、年々入手が厳しくなっている」と森さんは指摘する。森さんらは市内農家と提携し、横須賀産小麦を増産したいと考えている。
パン製造用に製粉した小麦には「製パン試験」「官能評価」という基準(1CW)がある。森さんは「外国産小麦のほうが基準点が高く粘りが強いためパンが作りやすい。国産小麦は粘りが弱いので品種改良も必要だが、国産小麦の特徴を生かしたパン作りを工夫したい」と意気込む。
試食会に参加した小麦の専門家・坂智広さん(横浜市立大学教授)は「品種改良により、神奈川県の気候・風土に適した小麦の新品種『ユメシホウ』を開発した。農水省も10年間で自給率を2倍に上げる方針を打ち出した」といい、「食文化は消費者が作る。消費者が国産小麦の安全性や味覚について納得してもらうことも必要」と話している。