年末から年始にかけて「縁起もの」が注目される中、横須賀・秋谷で暮らす作家・広田千悦子さんの著書「知っているとうれしいにほんの縁起もの」(徳間書店)が好評で、昨年末にはタイ語版も出版されるなど話題を呼んでいる。
アマゾンのベストセラー・ランキング(日本の民俗)でトップ10に入り、広田さんの同シリーズ本「おうちで楽しむにほんの行事」(技術評論社)も上位にランクインするなど人気上昇中だ。
「にほんの縁起もの」は2年前に出版した著書。昨年、出版エージェントを通じてタイの出版社「TPA Press」からタイ語翻訳の企画が持ち込まれたという。表紙や本文レイアウトも一新してタイで印刷・発行され、バンコクなどの書店に並んだ。価格は220バーツ(約600円)。
「日本の縁起ものをタイで出版すると聞いて驚いたが、縁起ものはアジア文化にも存在するので共感してもらえたのでは」と広田さん。同書は、「達磨」「七福神」「招き猫」「熊手」「凧」などの縁起ものを広田さん本人や家族のエピソードも交えて、イラスト入りで分かりやすく説明したもの。夫で写真家の広田行正さんが撮影した四季折々の写真も入る。
広田さんは北海道の生まれで、16 年前に横須賀・秋谷へ移住。海と山に囲まれ農家や漁港もある横須賀西海岸での暮らしが気に入り、絵手紙や陶芸などの創作活動を始めた。5年前からエッセーを書くようになり、「湘南ちゃぶ台ライフ」(阪急コミュニケーションズ)で文筆家デビュー。
不況の中で縁起ものが求められる理由について、広田さんは「普段の暮らしの中に大切なものがあり、縁起ものは福を呼ぶと考えられてきた。地に足をつけて身辺を見直すことが必要な時期に来ているのでは」といい、「失われたものを取り戻したいという風潮もあり、日本ってじつは良いものをたくさん持った国なんだと自信を持つことも大切だと思う」と話す。
昨年春に、築70年の古い民家を改装してアトリエ&スタジオ「秋屋四季」を作った。古民家スタジオも人気を集め、テレビCMなどの撮影舞台に使われるようになった。今年は4~5冊の新刊を準備中で、「大好きな横須賀西海岸の風物詩や自然風景などをエッセーと写真で紹介したい」と広田さんは笑顔をみせる。