横須賀在住のミステリー作家・山口雅也さんが5月28日、横須賀を舞台にした推理小説「新・垂里冴子のお見合いと推理」を講談社から出版した。女性読者が多い「垂里冴子シリーズ」の第3作目で、9年ぶりの新作。価格は1,890円。
小説の舞台は横須賀をモデルにした架空の街「観音市」で、30代独身で作家志望の垂里冴子がお見合いをする度に奇怪な事件に巻き込まれるというユーモア・ミステリー。新作では、観音崎・どぶ板通り・くりはま花の国などを連想させる場所で事件が起こる設定で、地方都市に暮らす家族の会話や人間模様をコメディータッチで描く。
山口さんは1989年に「生ける屍の死」(東京創元社)で作家デビュー。1994年には「日本殺人事件」(角川書店)で「第48回日本推理作家協会賞」を受賞した。同作品は、来日した米国人探偵が異文化に戸惑いながら事件を解決するというストーリーで、米国のB級映画のように「外国人が見た日本」をデフォルメした独特の描写が注目された。架空の街「観音市」は同作品から登場する。
学生時代から10年間東京で暮らし、作家デビュー後に横須賀にUターンした山口さんは「横須賀には3つの顔がある」という。作家の目線でみると「海に囲まれた半島で手つかずの自然が残っている。東京に近い地方都市としての便利さを持つ。米軍基地の街で異文化との接触やアンダーグラウンド的な土壌もある。この3つの顔があるので、小説の舞台としての面白さを再認識した」と振り返る。
「新作では垂里冴子とともに、日本殺人事件の主人公だったトウキョー・サムが脇役で登場して2人が競演する。意外な展開のあるミステリーの面白さを堪能してもらえれば」(山口さん)と話す。今月14日には、「日本殺人事件」が「日本推理作家協会受賞作全集」第81巻として双葉文庫から出版される予定。