「浦賀ドック」の呼称で親しまれた住友重機械工業・浦賀工場跡地で10月11日、ファッションショーやアート展などを行う「大人のための文化祭2015」が開催され、約1,400人が集まりにぎわった。
100年以上の歴史を持つ造船工場内に、帆船の「帆」を模したステージや照明を設置。「無機質」「感情」をテーマにしたライブアート&ファッションショーのコラボイベントでは、5人のアーティストらが布を使った多彩なデザインをその場で創作。外国人女性モデルを起用し、カラフルな衣装を披露して観客から大きな拍手が沸いた。
工場内では、浦賀の伝統工芸「鏝絵(こてえ)」のワークショップ、色砂で絵を描くワークショップ、木工アート、ジュエリーアート、創作イラスト展、外国人写真家によるモデル撮影スタジオなどさまざまなブースが展開された。
ステージでは、ビックバンドジャズ、ソウル、ゴスペルグループなどの音楽ライブも。フィナーレには、トーマス・ギヴンスさん指揮するYCCゴスペルクワイア(約100人)が「聖者の行進」などを熱唱して会場を盛り上げた。
今年で4回目。横須賀ゆかりの30代スタッフが企画・運営した。昨年まで体育館を会場にしたが、今回初めて歴史的建造物での開催にこぎつけた。「浦賀ドックでの開催により、今までなかったインスパイアが生まれ、今まで見られなかった表現や感動があるはず」(同実行委員会)。古い建物で電源もないため、発電機や照明機材の持込など苦労もあったという。
運営スタッフの赤堀愛子さんは「歴史を感じさせる古い建物と現代アートとのコラボにチャレンジした」といい、「小さな種くらいだった私たちの想いが、多くの人たちとともに少しずつ膨らんでいくのを感じています」と話す。地元商店街関係者からは「歴史遺産を活用した若い世代の斬新なアイデアに刺激された」「今後も継続してもらえたら」という声も。
浦賀での造船の歴史は古く、1854(安政元)年に日本初の洋式軍艦「鳳凰丸」を建造。1897(明治30)年に浦賀船渠(せんきょ)株式会社が創設。戦後は住友重工に受け継がれ、2003(平成15)年に閉鎖された。1899(明治32)年に建造されたドライドック(1号ドック)は、世界4カ所にしか現存しないレンガ積みドライドックのひとつで、貴重な文化遺産とされる。