横須賀在住の作家・山田深夜さんが2月下旬、旅と人をテーマにしたロードノベルの長編「ロンツーは終わらない」を徳間書店から刊行した。山田さんの新作長編小説は4年ぶり。価格は1,785円。
同小説の主人公は、横須賀に住む38歳の岩山。米海軍横須賀基地に勤務していたが、ある事件をきっかけに退職。無職になった岩山は大型バイクで「ロンツー」(ロングツーリング)中に、青森で自傷癖を持つ歯科大生を拾ってしまう。「僕を後ろに乗せてくれませんか」…それが岩山の悪夢の始まりだった。代々歯科医院の家柄から逃げ出そうと東京へ向かう息子、追っ手を差し向ける父親との相克、岩山自身も亡き父との暗い過去を持つ。東日本を縦断しながら、2人はさまざまな父と子の姿を目にする…というストーリー。
著者の山田さんは「取材に1年、執筆に1年かけた渾身の一作。旅をモチーフに土地柄や食べ物なども盛り込んだエンターテイメント」といい、「ロングツーリングには人生という意味も込めた。父親と息子のエピソードを交え、旅をしながら人が成長していく物語」と話す。
山田さんは福島県出身で、高校卒業後、横須賀にある京浜急行車両工場に20年間勤務。ブルースハーブ演奏家としてライブ活動を展開しながら、文筆活動を始める。1995年、阪神淡路大震災の被災地でボランティア・リーダーを経験。バイク乗りだったことから、オートバイ雑誌「アウトライダー」「ミスターバイクBG」などで小説を書き始めたという。
1999年、物書きに専念するため京急を退社。2005年、横須賀の街と人をテーマにした「横須賀Dブルース」、バイク小説「千マイルブルース」を寿郎社から同時刊行。2006年、角川書店の文芸誌「野性時代」に電車工場を舞台にした小説「電車屋赤城」を連載し、第29回吉川英治文学新人賞にノミネートされた。
横須賀に住み着いて32年になるという山田さんは、「半島という独特の雰囲気を持つ横須賀にすっかりハマってしまった。次回作は横須賀を舞台にしたミステリー小説を予定している」という。