1990年に解体された横須賀の歴史的建築物「EMクラブ」(旧海軍下士官兵集会所)のシャンデリアが6月19日深夜、ショッパーズプラザ横須賀(横須賀市本町2)の4階施設から取り外され、7月上旬開設予定の「軍港めぐり・汐入ターミナル」(現在工事中)の天井に設置された。
同シャンデリアは、EMクラブ解体の際に、米軍から隣接するショッパーズに寄贈されたもの。同施設4階の映画館通路に展示されていたが、EMクラブのイメージを再現する施設が汐入桟橋側1階にできることになっため、シャンデリアの引越しが行われた。
引越し作業は営業終了後の22時から始まり、手作業で7人が数時間かけて慎重に運び、午前3時に完了。直径2.1メートルの真鍮(しんちゅう)製シャンデリアは、当時のEMクラブ通路に装飾された実物。22個ある電灯のうちガラス容器3個が一部破損していたが、保存状態は良好で全球点灯した。
EMクラブは、1902(明治35)年に設立された旧海軍下士官兵集会所が前身。戦後、米軍に接収され「EMLISHD MEN`S CLUB」(下士官兵クラブ)として使用。同クラブ劇場には、米国本土の有名ミュージシャンらが来日して慰問公演を行い、ジャズやポップスに代表される戦後文化発祥地のひとつとなった。
1983年、日本政府に返還。汐入駅前再開発に伴い、1990年に「さよならEMクラブ記念式典」が行われた後に解体された。同跡地は現在、横須賀芸術劇場、20階建てホテル施設になっている。
軍港めぐりを運航するトライアングルの鈴木隆裕専務は「横須賀の歴史遺産として慎重に保管し、汐入ベイエリア観光の一環として活用したい」とし、「当時のEMクラブの雰囲気を再現した施設で、皆さんにあたらめて公開する」と話す。
鈴木専務は「EMクラブの関連資料はきわめて少ないため、これを機会にほかにも発掘できれば合わせて展示したい。皆さんに協力していただけたら」とも。7月5日、汐入ターミナルのオープンとともに、同シャンデリアも一般公開される。