大正期に創業し、「X JAPAN」のhideさんらが愛した横須賀中央駅前の老舗レコード店「ヤジマレコード本店」(横須賀市若松町1)が7月31日、大勢のファンに見送られながら閉店し、100年余の歴史に幕を降ろした。
ファンが寄贈したhideさんグッズが溢れていたヤジマレコード本店
当日夜には、地元音楽ファンやhideファンら100人以上が店頭に集まり、閉店を名残り惜しんだ。店の階段には、ファンが寄贈したhideさんの色紙・写真・グッズなどが数多く並んでおり、デジタルカメラを手に記念撮影する姿も目立った。
同店は、大正時代初期に三笠通りで営業を始めた「矢島蓄音機」が前身。旧海軍や地元料亭など花柳界関係者に、当時高価だった蓄音機やレコードを販売した。近年はスマートフォンが流行し、音楽ダウンロードが主流になったことなどから、「CD販売が苦戦するようになった」(同店)という。
1998年に33歳の若さで他界したhideさんが、高校生の頃から足繁く通い詰めたレコード店としても知られる。音楽を愛したhideさんは、高校2年のときに横須賀でメタルロックバンド「サーベルタイガー」を結成し、バンド活動を始めた。毎年、命日の5月2日前後には全国各地や海外からも大勢のファンが同店を訪れ、「hideの聖地」と呼ばれていた。
親子でhideファンだというクミさん(47歳)は「hideさんゆかりの名所が無くなるのはさみしい。当時高校生だったがファッションや音楽スタイルもあこがれだった」という。娘のユイさん(中学3年)も「CDを聴いてファンになった」と目を細める。
夜20時の閉店時には、同店の矢島靖夫社長が店頭に立ち、深々と頭を下げた。矢島社長は「地域の皆様に申し訳ないという気持ち。音楽業界のトレンド、将来の展望にはきびしいものがあり、取引先に迷惑を掛けたくないので閉店を決めた。応援してくださった皆様には心から感謝申し上げます」と挨拶。集まったファンらの温かい拍手に見送られ、本店のシャッターが閉じられた。
横須賀中央エリアの中心繁華街では、今年6月に市内8店舗を展開していた「平坂書房」本店が閉店。7月末に老舗割烹「魚藍亭(ぎょらんてい)」も閉店するなど、歴史を持つ大型店舗の撤退が相次いでおり、地元経済の空洞化が懸念されている。