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横須賀出身、フォトジャーナリスト・安田菜津紀さんら震災写真展

陸前高田の写真を撮り続けるフォトジャーナリスト・安田菜津紀さん

陸前高田の写真を撮り続けるフォトジャーナリスト・安田菜津紀さん

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 横須賀出身の新進フォトジャーナリスト・安田菜津紀さん(26歳)らが現在、東日本大震災で被災した陸前高田市(岩手県)の住民たちの足跡をたどった写真展「舫(もやい) ファインダー越しの3.11」をコニカミノルタプラザ(東京都新宿区)で開催し、話題を呼んでいる。

カメラを手に無人島・猿島を散策する安田菜津紀さん

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 同写真展は、陸前高田出身の写真家・佐藤慧さん(30歳)、大阪出身の渋谷敦志さん(37歳)との合同展。佐藤さんの実家が被災したことから、3人は震災直後より陸前高田に支援物資を携えて毎月通うようになったという。2011年12月には、3人共著「ファインダー越しの3.11」(原書房刊)を出版。

 同展では、3人が撮影したドキュメント写真30点を展示する。タイトルの「舫」は、船と陸、船と船をつなぎ合わせるロープの結び方のこと。現地では人と人の絆を結びつけるという意味でも使われるようになったそうだ。4月13日には陸前高田の漁師・佐藤一男さんを招いたトークイベントも開いた。

 津波で母親を亡くした佐藤慧さんは、「復興という言葉でまとめられがちな被災地の人たちの足跡を、震災直後から撮り続けてきたフォトジャーナリスト3人のファインダーを通じて、少しでも多くの人に伝えることができたら」といい、「震災の教訓を風化させないでほしい」と思いを込める。

 安田さんは、カキ養殖や漁を再開した地元漁師たちの姿を追い、子どもたちが遊ぶ仮設住宅の様子なども撮影。「子どもたちの笑顔には未来を感じます。その子たちの目には社会の様相も鏡のように映し出されているんです」と話す。

 安田さんは横須賀の海辺にある町に生まれ育った。「海はいつも身近にあった」といい、その海にはいろいろな面があることも知った。つらい過去もあり、壁を乗り越え続ける日々だった。中学生の頃に父と兄を亡くし、残された母・妹との生活はそれぞれが自分のことに精一杯でどこかギクシャクし、「家族ってなんだろう」「人と人との絆ってなんだろう」という疑問をいつも抱えていた。

 そんな16歳の頃、高校教師の勧めでカンボジアへ旅立った。NPO「国境なき子どもたち」友情レポーターとして、貧困にさらされる子どもたちを取材。自分よりもっと厳しい環境に置かれているはずの子どもたちの笑顔に触れ、「はじめて穏やかな気持ちになれた」「大切なものを教えてもらった」と振り返る。「伝えることで恩返ししたい」と思うようになった。

 21歳のときに大学を1年間休学。アルバイトで旅費を工面し、カメラを手に再びカンボジア取材へ。安田さんが現地の人たちと写真を通して交流する様子は、テレビドキュメント番組「情熱大陸」(2008年)で紹介された。その後も東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害、パラピンピックの取材も進めた。

 2012年、ドキュメント写真「HIVと共に生まれる~ウガンダのエイズ孤児たち」で、若手写真家の登竜門として知られる第8回名取洋之助写真賞を受賞。新進フォトジャーナリストとして注目を浴び、テレビ・雑誌などの仕事にも精力的に取り組んでいる。

 「被災地で写真を撮ることにはじめは躊躇(ちゅうちょ)もありました」と安田さん。「陸前高田に何度も足を運ぶうちに、現地の人たちから『記録を子や孫たちに残してほしい』『忘れないでほしい』と励まされました。そんなメッセージを写真に込めて伝えたい」と意欲を燃やす。

 同展は4月22日まで。10時30分~19時(最終日は15時まで)。

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